平成 27 年度 経口摂取支援研修会の報告

平成 27 年度 経口摂取支援研修会

今回、島根県言語聴覚士会は長崎リハビリテーション病院の院長、栗原正紀先生に御講演を依頼しました。迫りくる超高齢化社会、2025 年問題を見据えた地域包括ケアシステムのお話、長崎リハビリテーション病院が理念とする " 口のリハビリテーション " を実践していくなかでの経験談、食支援において見落とされがちな不適合義歯による咀嚼障害、医科歯科連携や長崎県での食支援の具体的展開などについて語られたその御講演は、たいへん貴重で示唆に富むものでした。摂食嚥下は多職種の連携の場である、という先生の御言葉を、医療・介護に携わっていく我々は、あらたに銘ずる必要があると感じました。
ときおり話されるこぼれ話、長崎のグルメや名物の話もとても面白く聞かせていただきました。明日への希望と活力に満ちた御講演をして下さった栗原先生、参加していただいた皆様に厚くお礼申し上げます。ありがとうございました。

栗原正紀 先生 プロフィール

学歴
昭和 53 年 長崎大学医学部卒業

職歴
昭和 53 年 長崎大学付属病院脳神経外科学教室入局
平成 2 年 長崎大学脳神経外科講師
平成 2 年 十善会病院脳神経外科部長
平成 11 年 十善会病院副院長
平成 13 年 近森リハビリテーション病院 院長
平成 18 年 社団法人是真会 理事長
平成 20 年 長崎リハビリテーション病院院長

役職
1. 日本リハビリテーション病院・施設協会会長
≫ 東日本大震災リハビリ支援関連 10 団体代表
≫ リハビリ関連団体協議会代表
2. NPO 地域の包括的医療を考える研究会副理事長
3. NPO 長崎斜面研究会副理事長
4. 厚生労働省医政局「チーム医療推進方策検討 WG 」委員
5. 長崎回復期リハビリテーション連絡協議会代表世話人
6. 長崎県脳卒中検討委員会委員


平成 27 年度 経口摂取支援協議会研修会において島根県理学療法士会副会長である安来第一病院 理学療法科長 太田真英先生に「サルコペニアとリハビリテーション」というテーマでご講演いただきました。

島根県理学療法士会は、島根県内で勤務する理学療法士、約 600 人で構成される職能団です。理学療法士は、身体機能のスペシャリストと言われており、身体の構造・機能を知り、病気や怪我によって起こる身体障害に対して運動療法や物理療法を駆使して機能回復を図ります。また、高齢者や虚弱な方に対して、介護予防を目的に身体機能を高めるための運動や生活指導、環境調整なども行います。
地域における介護や在宅医療、看護を必要とする方の多くは摂食・嚥下障害があり、健常者より積極的な栄養摂取の支援が望まれています。その中で、理学療法士が果たす役割は①姿勢への取り組み (身体機能の改善、器具等による環境設定等)、② 呼吸理学療法 (呼吸機能の評価、呼吸訓練の機器の活用等)、③ 全身運動に関する評価および訓練 (持久性、移動能力等) の 3 つであると考えています。これらが十分に機能するためには、筋力低下をはじめとした身体機能低下と栄養の関わりを十分に理解する必要があります。講演では、サルコペニア・フレイル・ロコモティブシンドロームに関する情報提供にはじまり、リハビリテーションと栄養を一体的に考える事の有用性、実際の取り組みなど広い範囲をポイントを押さえつつ説明いただいきました。
2025 年問題が社会で大きな課題となる中、超高齢化社会においては、自分の家族をどのように過ごさせたいか、あるいは、自分がどのように過ごしたいかを地域全体で考える必要があります。多くの地域住民や高齢者は、住み慣れた地域で温かい関係性の中で過ごしたいと願っています。元気な高齢者が増えることは、地域そのものの元気につながります。今後も「経口摂取支援」という観点から理学療法士としても地域医療・地域保健をはじめとした県民の「元気」を支援していきたいと思います。