歯周病予防

1. 成人の 80% 以上が歯周病
私たち日本人が歯周病にかかっている率を調べてみました。年齢でみると、歯ぐきに炎症がみられる人のピークは 45 ~ 54 歳で、実に 88.44% に及びます。高齢者の数値が減少しているのは、すでに歯周病などで失った歯の数が多いためです。


2. 歯周病には原因菌がいる
私たちの歯にこびりつく歯垢 (プラーク) は、まさに最近のかたまりです。わずか 1mg 中に 10 億もの細菌がすみついているといわれています。その細菌の中に、むし歯の原因菌や歯周病の原因菌がいるのです。では、歯周病の炎症に関係しているのはどのような細菌なのでしょう。現在、10 種類の細菌がわかっています。まず、歯肉炎を引き起こすのは、歯ぐきより上の歯顎部の歯垢にいるアクチノマイセス・ビスコーサス菌やアクチノマイセス・ネスランディ菌。一方、歯周炎は歯周ポケットの中にひそむ空気を嫌う菌 (嫌気性菌) が原因となります。その種類としては、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌 (成人性歯周炎)、プレボテーラ・インターメディア菌 (若年性歯周炎) などが知られています。いずれにせよ、歯周病は細菌感染症といえます。


3. こうして歯が抜けていきます
成人の 80% 前後が歯周病になっているにもかかわらず、自分がそうだとわかっている人、あるいは自分が歯周病のどのレベルであるのか知っている人は、意外に少ないようです。そこで、歯周病の進行プロセスを追ってみましょう。まず、歯肉炎では歯ぐきがたまに腫れたり、赤く充血したり、歯ブラシに血がにじむ程度です。初期の歯周炎になると、歯周ポケットができ、歯周組織の破壊がはじまります。歯が浮くような感じがすることもあります。中期歯周炎になると、歯ぐきがやせたりブヨブヨになる、食べ物が歯にはさまりやすくなる、口臭がする、硬いものが噛みにくくなる … といった感じになります。やがて末期の歯周炎になると、歯槽骨がほとんど無くなり、歯の根が露出します。歯は著しくぐらついて、最後は抜け落ちます。


4. 口を清潔に保つ事は全身によい影響
歯周病は単なる口の病気ではありません。最近、さまざまな研究により、歯周病と全身の健康との関係が次々にわかってきました。たとえば、糖尿病の人には歯周病になっている人が多く、また歯周病が治りにくいという報告があります。歯周病と心臓病・肺炎・低体重児出産・骨粗しょう症などとの関連も指摘されています。


5. 喫煙 (たばこを吸う事) と歯周病の関係
島根県歯科医師会では、事業所でのアンケートから喫煙や歯磨きと歯周疾患の関係について調査しました。
その結果、毎日 15 本以上たばこを吸う人は、歯磨きを 1 日 2 回・ 3 回行っていても、歯周病が改善しない事がわかりました。喫煙 (タバコ) は歯周病における単独の危険因子であると説明できます。


6. 歯の寿命が延びると、健康寿命も延びます
健康に関してこれからの日本人の目標は、健康寿命の延伸です。健康寿命とは、健康で明るく元気に生活する期間、つまり寝たきりや痴呆にならない期間のことです。そのためには、歯の寿命を伸ばすことも大切。20 本以上自分の歯がある人は各年代で増えていきます。今後も 8020 運動を続けていくことによって歯の寿命を伸ばし、健康寿命を伸ばすことが可能です。
島根県と島根県歯科医師会が平成 13 年に実施した調査では、75 歳から 84 歳全体での残存歯数は約 10 本、要介護施設の入所者平均は 5.1 本でしたが、半数は歯が 1 本もない人でした。歯が多く残っているほど健康寿命が長いと思われます。
また一方で、要介護施設入所者や自宅で寝たきりの高齢者に対して入れ歯を入れるなどの歯科治療により口から十分な栄養をとることによって、QOL(生活の質) や ADL(日常動作の活発性) が向上することがわかっています。


7. 年 1 ~ 2 回は歯科健診が必要です
内科的な健康診断は、職場や自治体や学校で定期的に受けている方が多いでしょう。ところが、歯の健康診断はどうでしょうか。内科的な健診と同様に、歯科健診も年に 1 ~ 2 回は欠かせまん。


8. 健診はどこで受けたら良いでしょうか
歯科健診は、最寄の歯科医院、あるいは自治体の保健センターや指定歯科医療機関などで受けられます。この歯科健診をきっかけに、かかりつけの歯科医院を持っておくことは、とても大切。かかりつけの歯科医院は生涯にわたって歯と口の健康を保っていくためのパートナーです。


9. 歯科医院で細菌の温床 歯石 をきれいにして定期的に管理しましょう
歯科医院で、定期的に歯石の除去を受けてください。歯石は唾液の働きで歯石が石灰化したもので、歯周ポケットにたまし、歯周病菌の温床となります。これを除去するためにはスケーラーという器具を使った特殊技術が必要。家庭で自分ではできない作業です。歯石を除去すれば歯周病の進行を予防できるのはもちろん、歯がツルツルで爽快になります。
現在歯周病治療後の定期的なメンテナンスについても、保険診療で行うことが可能ですのでかかりつけの歯科医院にご相談ください。
家庭でできるセルフケアの代表といえば、歯ブラシによるブラッシングでしょう。ほとんどの人が 1 日 2 回以上みがいているのですが、みがき残しが多いのが現実です。ものを食べたらすぐに、歯垢のたまりやすいところを重点的に、ていねいにみがきましょう。


10. 歯間清掃用具を使って歯垢の除去率をあげよう
ブラシと歯みがき剤を使って、熟練者がていねいにブラッシングしても、歯垢の除去には限界があります。その理由は、歯と歯が接している面、歯と歯ぐきの境目、奥歯の噛み合う面にある溝の部分などには、毛先が届きにくいからです。そこでおすすめしたいのが歯間清掃用具の併用。ブラッシングに加えて、フロスや歯間ブラシを使えば、お口の中の歯垢のほとんどを除去することができます。
単に歯と歯の間を通すだけではなく、フロスを歯肉の中に入れて、傷つけないように歯面に沿って上下に動かすことが肝心です。


11. よくかんで食べましょう
最近のメニューは、噛まなくてよいやわらかいものばかりが好まれる傾向にあります。しかし、よく噛むことは全身にさまざまな効用をもたらします。噛みごたえのある食材を活用し、調理方法にも工夫をこらしたいものです。