お歯黒道具

 
ふし入箱 : 大小の形があり、細粒を区別していたという。
お歯黒壺 : かね水を入れておく壺。越前焼を最高の物といい、色・形は様々である
耳盥(みみだらい) : 木製漆塗りの洗口用のたらいで、特徴は高さと底の広さが同じである。(江戸時代)
かねつけ碗 : 古鉄、古釘に酢を注ぎ酸化発酵した鉄漿水(かねみず)をわかし、この真鍮製の碗に入れ、ふしの粉末を混ぜ筆で塗る。(江戸時代)
かねわかし : 鉄漿水(かねみず)を沸かす真鍮製の器具。(江戸時代)
湯とう : 温めたお湯をこれに入れておく。(江戸時代)
日本人の歴史が始まってから明治初期まで続いた不思議な習慣としか思えないこのお歯黒の起源は不明にて諸説あるが、その一つに南方伝来説がある。

昔、日本に来た南方民族は移住後も檳榔樹 (びんろうじゅ) の実を噛む習慣を続けたが、その樹は日本の風土に生育が適せず、ためにその実は貴重品となり、高価なために貴人でないとこれを使用できず、それにかわる物として染料が考案され、、鉄漿 (かね) となったといわれている。

武士が歯を染めるようになるのは平氏が京都に入って公卿をまねしたのが始まりとされ、平敦盛、更に今川義元、織田信長、豊臣秀吉等々皆お歯黒をしていたとされ、更に江戸時代になると既婚婦人のしるしとして女性だけが歯を染めるようになった。
お歯黒の製法であるが、沸騰させた茶に、焼いた古釘、鉄片を入れ、飴、麹、砂糖、酒を加えて、酸化発酵させた液を 1 か月くらいお歯黒壺に貯える。これはタンニン酸第二鉄で、これに五倍子 (ふしの粉) を混ぜて楊枝で何度も、何度も歯に重ねて染めて、更に「タバコ」を喫って乾燥させたという。

お歯黒には歯痛を抑えて歯を強くする働きがあるといわれ、その液には殺菌性があるために「むし歯」の罹患進行を阻止する効果があり、江戸時代の女性には「むし歯」が少なかったのが事実である。
一見不思議な風習としか思えないお歯黒、そこには驚くべき科学的予防効果の裏付けがあった。

日本人の歴史が始まってから明治初期まで続いたこの風習も明治 6 年、政府の禁止令で終わったが、昭和初期まで残っていたのも事実である。

『江戸時代上級社会の婦人の嫁入り道具としての「お歯黒道具」ですが、当館では 5 セットほどの完全な形で収蔵しています。